初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
「まあ、喜ばしい話じゃないからな。お前だけじゃなくて、友達には誰にも言ってないよ」

 都築は話を続けた。

「あいつ、俺の気持ちが自分から離れてることにうすうす気づいてたから、子供がだめになって捨てられると思ったんだろうな。精神的に参っちまってさ。だから……封印したんだ。お前への気持ちは。あのとき、キスも拒まれたからさ。俺の一人相撲だと思ってたし」

「そうだったんだ……」

「今はもう落ち着いているけど、一時は入院したり、いろいろあった。だからさ。俺はユキと別れられないっていうか、別れる気はないんだよ。今はもう落ち着いてきてはいるけど、また壊れていく姿を見たくない」

 そう言うと、都築は前かがみになって下を向き、組んだ手の上に自分の額を預けた。

「だけど、お前もずっと好きでいてくれたんだよな、俺のこと」
 うめくような声で都築が訊いた。

 もう心を偽ることなく、わたしも素直に答えた。

「うん。ずっと好きだった」

 下を向いたまま、都築は言った。
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