初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
 わたしは頭ひとつ大きい都築を見上げる。
 最初に声をかけられた日と同じように。

 つい、昨日のことのようだ。

 わたしの作品を気に入ってくれた都築。

 わたしにモードの本当の面白さを教えてくれた都築。

 モノクロだったわたしの日々をあざやかな極彩色で染めてくれた都築。

 わたしの全てだった都築。

 出会えて、良かった。
 今は心からそう思う。

「じゃあな、今日はありがとな。朱利」
「うん」

 これがいい。
 これが落ち着く。

 ああ、でも、ひとつだけ後悔があるとすれば、それは……

「あのさ。やっぱキスしとけば良かった。あのとき」

「うん?」

「だって、そしたら、わたしのファーストキスの相手、都築だったのに」

 その言葉を聞くやいなや、都築は急に表情を変えた。

「都築?」

「……言うなよ。そんな、いじらしいこと」
「えっ?」

「俺、さっきからずっと、ぎりぎりのとこで踏ん張ってたんだけど」

 都築はわたしの腕を強く引き、エレベーターの前に連れて行った。
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