初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜
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待ち合わせ場所に急ぐと、千隼さんはスマホに目を落としていた。
近づいてゆくわたしに気づき、顔をあげた彼は、嬉しそうに眼を細めた。
それですべてわかった。
わたしはどれほど、この人を、この優しい人を傷つけていたのかを。
大事にしたい。
これまで、彼がわたしに与えてくれた愛情をわたしも返したい。
「ふっきれました。完全に」
「そう」
「今まで、ごめんなさ……」
最後まで言わせずに、彼はわたしを抱きしめた。
人が見ているのも構わずに。
「本当に僕を選んでくれたんだね」
「はい」
好きです。千隼さんが。
他の誰でもないあなたが。
単色のイルミネーションで飾られた街路樹の下で、わたしたちは永遠に等しいほど長い口づけを交わした。
そして……
翌年の暮、都築とユキちゃん夫妻の間には長女が誕生した。
今でも時折、ふと、あのときの都築の言葉を思い出すことがある。
――一緒になるか、裏切者に。
でも、もうわたしは……
けっして、その言葉に、縛られたりはしない。
一点も曇りのない心で、わたしは都築に言った。
おめでとう、良かったね、と。
(完)
*お読みいただき、ありがとうございました(^▽^)♡