初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜

***

 待ち合わせ場所に急ぐと、千隼さんはスマホに目を落としていた。

 近づいてゆくわたしに気づき、顔をあげた彼は、嬉しそうに眼を細めた。

 それですべてわかった。
 わたしはどれほど、この人を、この優しい人を傷つけていたのかを。

 大事にしたい。
 これまで、彼がわたしに与えてくれた愛情をわたしも返したい。

 
「ふっきれました。完全に」
「そう」
「今まで、ごめんなさ……」

 最後まで言わせずに、彼はわたしを抱きしめた。
 人が見ているのも構わずに。

「本当に僕を選んでくれたんだね」
「はい」

 好きです。千隼さんが。
 他の誰でもないあなたが。


 単色のイルミネーションで飾られた街路樹の下で、わたしたちは永遠に等しいほど長い口づけを交わした。



 そして……
 翌年の暮、都築とユキちゃん夫妻の間には長女が誕生した。

 今でも時折、ふと、あのときの都築の言葉を思い出すことがある。

 ――一緒になるか、裏切者に。

 でも、もうわたしは……
 けっして、その言葉に、縛られたりはしない。

 一点も曇りのない心で、わたしは都築に言った。

 おめでとう、良かったね、と。

(完)

*お読みいただき、ありがとうございました(^▽^)♡

 
 

 
 

 
 
 
 
 
 

















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