可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる
「黒髪持ちで生まれてたのに・・・?」



「でも魔獣持ちでもある。」



「グースのような魔獣ではないけどな。」



「魔獣の大群により死んでしまった親の代わりにエリーが赤ちゃん達を救った話は聞いた。」



「そんなこともあったな・・・。」



ステル殿下はそう呟くと、血で染まった目を怒りで満ち溢れさせた。



「地獄のような光景だった。
あそこに追いやられていた多くの民が死んでしまっている、地獄のような光景・・・。」



「うん、ケロルドから聞いた。」



「俺はずっと王族としての地位も王位もいらないと思っていたが、カルティーヌが聖女として俺の元に現れてくれた。」



「うん。」



「あんな地獄はもう二度と起こしてはいけない。
でも、あんなことがあったのにアデルの砦を出て行く民が絶えないのも事実。
アデルの砦のこちら側は税金が高過ぎる。」



「そのうえ年頃の女も男も徴集されるとなれば、益々アデルの砦を出て行く民ばかりになる。」



「あそこまでの魔獣の大群が押し寄せたのはサンクリア王国が建国されて初めてのこと。
次はないとは言い切れない。」



ステル殿下が上半身を起こしながら自分の髪の毛を少しだけ触った。
それを見て、言う。



「黒髪のせいかどうかは分からない。
でも、その黒髪のせいで厄災が降りかかるのなら、その厄災の中でも生き抜ける強い国にすればいい。
強く強く強く、どこまでも強い国に。」



ステル殿下の髪の毛に両手を伸ばし、思いっきり漆黒の髪の毛を触る。



「黒髪持ちの国王でも国を安泰にすることが出来る為に私が聖女になれたのだと思う。
立て直そう、この国を。」



ステル殿下の身体に跨がり、黒髪の頭を強くこの胸に抱き締めた。



「クラスト陛下を私が探してくるから待ってて。
遺体だろうが何だろうが、私が絶対に探してくる。」



そう言った私の身体をステル殿下は少しだけ抱き締めてきた。



「子作りは手短にするから・・・。」



私の胸の真ん中で小さな声で呟き、濡れていないであろう私の女の中にソレを少しずつ貫いてきた。



痛くて・・・



痛くて・・・



あまりにも痛く感じたけれど、ステル殿下が単調にソレを突き上げ続けていくのをただ耐えていた。
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