婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「軍隊でも一緒に頑張ろうぜ」
思考が停止して深く沈んでいたわたしは、レイの明るい声音で我に返った。
「うん……そうだな」と、わたしは力なく笑う。
「そうクヨクヨするなよ。僕もしばらくはここにいるからさ、二人で特訓をしよう。君は今、結構やばい状態なんだって?」
「えぇっ!?」
唐突に出てきた不穏な言葉に、目を剥いた。
えっ、それって、まさか……。
「教官が言っていたぞ。オディオは女みたいにひ弱だから炊事係に回そうか、って。まぁ、たしかに君は著しく体力がないからな」と、彼はくつくつと笑う。
「う、嘘だろ……」
愉快そうな彼とは対照的に、わたしは青ざめてヨロヨロと後ずさった。
そんな……困るわ! ローラント軍の情報を得るために潜入したのに、それじゃあ献立の情報しか得られないじゃない!