婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

17 軍隊生活③ 〜兵士の初任務〜

「お前たちの初任務が決定した」


 教官からの告知に見習い兵士たちはどよめいた。軍隊に潜入してから早一ヶ月、ついに兵士として戦うときがやって来たのだ。

 思わずぶるりと震えた。顔も自然と引き締まる。
 これまで戦場とはかけ離れた貴族令嬢の世界に身を置いていたわたしが、槍を持って戦うのだ。

 教官は兵士全員を見回してからおもむろにわたしに視線を移して、

「そう心配しなくとも大丈夫だ。今回の仕事はオディオでもできる簡単なものだ」

 どっと笑い声がこだまする。わたしの顔が矢庭に真っ赤になった。
 レイのお陰でとりあえず首は免除されたものの、わたしの成績は他を大きく引き離して最下位だったのだ。

「ぐっ……!」

 壁際に寄りかかっていたレイに目をやると、可笑しそうにくつくつと笑っていた。そ……そんなに笑うことないじゃない!

「だが、これも大事な任務だ。気を抜かないで臨むように」

「「「「「了解!」」」」」

 いつの間にかさっきまでのピリピリした緊張感は飛んで行って、兵士たちの士気は高まっていた。それぞれが闘志に燃えている様子だ。
 わたしも足を引っ張らないように、頑張らなくちゃ!

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