婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
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レイモンドがオディールと再会する数日前のこと――、
「アンドレイ王子に恋人が?」
側近のフランソワからの報告にレイモンドは眉根を寄せる。
まさかというか、案の定というか……これまでのオディールの待遇を見ると頷ける理由だ。
「それでオディール嬢が邪魔になってうちに送ったのか? わざわざ王妃教育の一環だと嘘をついて?」
レイモンドは王子の不可解な行動に頭を捻った。
そんなことをして、一体なんになるのだ。一時的に婚約者を遠ざけたとしても、いずれは戻って来る。そうしたら二人の婚姻もすぐじゃないか。
「その理由が依然分からず……」と、フランソワは肩をすくめた。
「訳もなく婚約者を単独で他国へ寄越すはずがないよな。おそらく婚約破棄をするために送ったのだろう。……となると、考え得るのはオディール嬢の不貞を訴えるのが一番現実的か? 全く、酷い王子だな」