婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
爆発音のほうを見ると――それは競売会場で起こっていた。悲鳴と怒号が混じったような叫び声がいくつも重なる。現場はかなり混乱しているようだ。
「レイが危ない……!」
「お、おい! オディオ!」
気付いたら、わたしは同僚の制止を振り切って無我夢中で走っていた。身体が勝手に動いたのだ。
あの場所には、レイがいる。今朝、いつもの飄々とした調子で「王太子殿下直属の騎士団で先陣を切って突撃するんだ」って言っていた彼が。
いえ、でも、まさか――……!?