婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
会場に辿り着くと、建物の右半分が破壊されていた。でも想像よりかは被害は少ないようで、ほっと胸を撫で下ろす。
……いえ、まだレイの安否を確認できていないわ。彼の元気な顔を見るまでは安心できない。
わたしは人々が混乱して出口へ殺到する中、吸い込まれるようにフラフラと建物内に入った。すぐに階段を見つけて地下へ潜る。
「うっ……!」
下に降りるにつれて鉄のような魚のような生臭い匂いが濃くなっていった。思わずハンカチで鼻口を押さえる。
なに、この異臭は? なにが起こったの?
わたしは慎重に階段を降りる。足場がぬるぬると滑った。
そして、最下部に着くと、
「なに……これ…………」
悪寒が走って、その場から動けなかった。ガタガタと全身がからくり人形のように震え出す。見たくないのに、見開いた双眸がその光景を必死で焼き付けていた。