婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「なにか気になることでも?」
気が付くと、レイが隣に座っていた。じっとわたしの瞳を見つめている。
わたしは動揺を隠せずに、上擦った声で彼に聞いた。
「その……この、アンドレイ王子、って…………?」
「あぁ、アングラレス王国の王子だな。かなりの太客のようだ」と、レイはなんのけなしに答える。
「まっ、間違いないのか?」
わたしは縋るように彼の目を見た。
嘘であって欲しい。なにかの間違いでいて欲しい。
あんなに素晴らしいアンドレイ様が、そんなことをするはずがない。
しかし、レイのルビーのような紅い瞳は揺らがなかった。