婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

20 これからのこと

 気が付くと、わたしはベッドの上に寝かされていた。

 ぼんやりと虚空を眺める。そこは見覚えのある天井だった。
 ……兵士の寮ってこんなに広々としていたかしら?
 まるで、ここは――、

「オディール! オディール!」

 聞き覚えのある無機質だけど可愛らしい声にはっと目が冴える。
 ここは、大使館のわたしの部屋!

 ヴェルがビュンとわたしの胸に飛び込んで来る。そして頭を押し付けるようにぐりぐりと擦り寄せてきた。わたしもほっとして、彼の体を優しく撫でる。

「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクドリョクカ ソレダケガトリエサ」

「ふふっ、そうね。心配してくれたの? ありがとう」

 わたしは思わず吹き出した。ヴェルはあの日以来たまに「真面目で努力家」と喋るようになったのだけど、時折ごちゃ混ぜになって変な単語を言うようになったのよね。
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