婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
アンドレイ様は正義感の強い方で、真面目で、いつも毅然としていて、わたしを正しい方向へ導いてくださるような素晴らしい方だ。わたしは出来損ないで令嬢としての基本もなっていないので、いつも彼から厳しい指導を受けていたわ。
立派な淑女になってやがて王妃となって彼をお支えすることが、わたしの使命だった。お父様からも常にそう言われていた。
彼はいつも正しくて、わたしはいつも間違っていて……彼の言うことは絶対で、彼が曲がった道に進むことなんてあり得なくて、彼はわたしの全てで…………。
アンドレイ様からの贈り物はいつも花束だった。
誕生日や節目のとき、更に互いに忙しくて中々お会いできないとき、いつも両手いっぱいの花束を贈ってくださっていた。
とっても嬉しかったし、足手まといのわたしなんかを気遣ってくださって感謝していた。
でも……贈り物を比較するなんて品のないことだけど、わたしはブローチなんて戴いたことは一度もない。手元に残るようなものは、一度も。
………………………………、
そっか。