婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「……そう言えば、一人になるのは初めてね」

 わたしは侯爵家に生まれたときからずっと王都で暮らしていて、家族や使用人に囲まれて育ってきた。側には常に侍女が控えていたし、アンドレイ様や他の貴族令嬢たちとも頻繁に交流をしていたし、一人ぼっちになるのは初めてだ。
 今回は国の行く末を背負った極秘任務だから侍女一人さえも付かない。
 向こうに着いたら身の回りのお世話をしてくれる者を付けるとは聞いているけど、長年側仕えしてくれた侍女ではないので少しだけ不安だ。


「オディール オディール」

 隣に座っている友人が、出し抜けに声を上げた。
 わたしはくすりと笑って、

「そうね、あなたもいたわよね。一人なんかじゃなかったわ」
< 13 / 303 >

この作品をシェア

pagetop