婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
◆
わたしはスカイヨン伯爵から「仕事はいいのでしばらく安静にするように」と言われて、大人しく従うことにした。一人になって、ゆっくりと考えたかった。
正直、アンドレイ様の意図が分からなかった。
でも、彼に直接尋ねることなんて出来なかった。そんなの、怖くて出来ないわ。
悶々とした気持ちは日を追うごとに膨れ上がって、モヤモヤとしたものがずっと私を包み込んでいた。
レイモンド王太子殿下は違法競売の事件を追っているとレイが言っていた。王太子殿下はアンドレイ様のことを糾弾するつもりなのかしら?
そうなると、アングラレス王国はどうなるの?
考えれば考えるほど、暗い深淵に引き込まれてど壺にはまりそうで頭が痛くなる。でも、考えないで目をそらし続けるのはもっと良くないと思った。
ここでは、わたしは自由。
そして、諜報員。
レイは「好きにすればいい」って言っていた。
だから、自分の目で確かめたいと思った。
たとえ、どんなに悲しい事実が待ち受けているとしても。