婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 アンナは悲しげな表情を浮かべて、

「そんなのって……」

「ドレスはこういったデザインのものしか持っていないのよ。折角アドバイスをくれたのにごめんなさいね」

「そうですか……。あっ、でも、ローラントにいる間くらいはお嬢様の好きなデザインのドレスを着たらいかがですか? ここなら王子殿下の目もありませんし」

「えっ?」

 わたしは目を丸くした。そんなこと、考えてもみなかったわ。
 たしかにアンドレイ様がいらっしゃらないから、彼の好みに合わせる必要はないのかもしれない。
 でも、婚約者として離れていても彼に対する忠誠を示さないといけないと思うし……。
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