婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
◆
パーティーの前に、まずは国王陛下及び王妃殿下、王太子殿下に挨拶をする。国内の高位貴族から始まって、わたしたち外国人は最後のほうだ。
わたしは緊張と期待が綯い交ぜになって、そわそわと順番を待っていた。
久し振りの夜会。しかも、王太子殿下との初対面。そして特命。
順番が近付くにつれ、ドキドキと胸が高鳴った。
そして、
「ガブリエル・スカイヨン伯爵、オディール・ジャニーヌ侯爵令嬢」
いよいよわたしたちの番がやって来た。伯爵にエスコートをされ、王族方の前へ趣き、深々と頭を垂れる。
「おもてを上げよ」と、国王陛下のお声掛けでわたしは顔を上げて王族方を見た。
次の瞬間、目を剥いて硬直する。
わたしの目の前には…………なんと正装したレイが立っていたのだ。