婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
わたしは鳥籠の扉をそっと開けた。すると中から一羽の鳥がちょこんと顔を覗かせて、そしてピョンと飛び降りてわたしの膝の上に座る。小さな頭を優しく撫でた。彼は気持ちよさそうに目を閉じる。
彼――ヴェルは葡萄酒の瓶くらいの大きさの鳥で、大きな黒い嘴と、派手な黄色い鶏冠、そしてはっとするような鮮やかなエメラルドグリーンの体が特徴的だ。
お父様が他国に外遊した際に南方にある国の要人から友好の印に頂いてきた、人の言葉を話す不思議な鳥。
わたしは一目でヴェルを気に入って「自分が飼う」と言い張り、小さい頃からずっとお世話をしている。彼はなんでも話せるわたしの一番の友達で、辛いことも楽しいことも二人で乗り越えて来たのだ。
「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」