婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 とりあえず無事に王族の方への挨拶が終わってパーティー会場に移ると、開口一番スカイヨン伯爵が驚いた顔でわたしに尋ねた。

「侯爵令嬢、王太子殿下とは既にお知り合いだったのですか?」

 彼が驚くのも無理はない。
 公式では、わたしは王太子殿下から何度も謁見を拒否されている身なのだ。

 わたしはため息をついて、

「……そうよ。わたしがオディオとして鉱山と軍隊に潜入しているときに――」

 言いかけて途中で口を噤む。今、とんでもない事実に気付いたのだ。

 わたしがレイと会ったのはオディールではなく、オディオとして。
 ということは……、


 レイは「オディール=オディオ」だと最初から分かっていた!?
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