婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 にわかに顔が上気した。わたしが間諜気取りで鉱山でレイの正体を見破ったって言い負かしたけど、彼はそのときには既にわたしが侯爵令嬢だって知っていたのだ。
 だから初対面からあんなに馴れ馴れしかったのね!

 脱力感でその場にへたり込みそうになった。羞恥心が自身の身体を蝕んでいく。
 わたしは……最初から彼の掌の上で転がされていたんだわ…………。
 不覚……。

「侯爵令嬢、どうされたのですか?」スカイヨン伯爵が心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。「どこか具合でも?」

「は、伯爵……どうしましょう!」

 わたしは懺悔室で告解するように、これまでのことを洗いざらい伯爵に話した。途端に彼の人形みたいな顔が真っ青になる。
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