婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「初めまして、侯爵令嬢。おれはジャン・リヨネー。伯爵家の者だ。この古美術店のオーナーで『優美な死骸』の表向きのリーダーだ、よろしくな」
「ご機嫌よう、リヨネー伯爵令息様。わたくしはジャニーヌ侯爵の娘、オディールですわ。あの、表向き、とはどういうことでしょう?」
「あぁ、見ての通りおれたちの真のボスはレイモンド王太子殿下だ。今も偉そうにふんぞり返って座っているだろう?」
「誰が偉そうだよ」
レイがムッとして尋ねると、
「「レイ」」
二人が声を揃えて答えた。
「三人は仲が宜しいのですね?」と、わたしはくすりと笑う。傍から見ていてなんだか微笑ましい関係だわ。
「おれたちはガキの頃からの腐れ縁なんだ」とリヨネー伯爵令息。
「そうそう。子供の頃からレイに振り回されていたんだよ」と、ルーセル公爵令息が肩をすくめる。
「そう……でしょうね」と、わたしは苦笑いをした。レイと知り合ってまだ日が浅いわたしでも彼の言動に辟易しているのに、お二人はさぞかしご苦労したことでしょうね。
チラリとレイを見やると、まだしかめっ面をしたままだった。