婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ところで、王宮にも諜報機関があるのに、なぜ別の個人機関を?」
わたしは首を傾げる。わざわざ二つも同じ目的の機関を設立する理由が皆目見当がつかなかった。
「オディール嬢。情報を収集する際に重要なことはなんだと思う?」と、出し抜けにレイが問いかける。
「えっ……と。正確さ、かしら?」
「そう。それと、スピードだ」
「あっ、たしかに」
レイは頷いて、
「手札は多いほうがいい。日夜、帝国の脅威に晒されている我々にとっては情報源というものは生命線だ。どんな小さな沙汰も絶対に取り零すことがあってはならない。だから、より早くより正確に。その為に、一つの情報を得るにしても多方面から攻めるようにしているんだよ。ま、ここは非公式だけどね」