婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「そうなのね。だからわたしのことも色々知っていたのね。凄いわね……」
素直に彼を尊敬した。普段はおちゃらけている人だけど、国のために表からも陰からも支えているのね。
ダイヤモンド鉱山でも坑夫たちから慕われていたし、王子としては素晴らしい人徳の持ち主なのかも。
つい……アンドレイ様と比較してしまう。彼は誰よりも優秀で素敵な王子なのだとずっと思っていたけど………………、
――と、そこまで考えてわたしは耳を塞いだ。キンと金属音のような不快な音が頭に響く。
駄目……人と人を比較するなんて下品なことをしたらいけないわ。ましてや婚約者と他の殿方をなんて。わたしったら、なんて最低な人間なのかしら。