婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「――ちなみに」
リヨネー伯爵令息の声で、わたしは我に返る。
「組織を立ち上げたのは実質レイなんだけど、おれたち『優美な死骸』は王家とは関係のない独立した機関だ。だからモットーは公正・中立・信頼。依頼人のことは絶対に口外しないし、犯罪にも加担しない。仮に王家の不正を調査しろって言われてたら徹底的に調べるぜ」
「不正なんてやってないが」
「もちろん、罪をでっち上げることも絶対にない」
「……分かりましたわ」わたしは頷く。「では、改めてあなた方に依頼をお願いしたいのです。どうか、アンドレイ王子殿下の身辺について調べていただけないでしょうか?」
「理由は?」
レイがじっとわたしの瞳を見据える。その紅い双眸ににわかに炎が宿ったようで、トンと胸を突かれたように感じだ。
「り、理由……? えっ……と……」