婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」
「そうね。でも、侯爵令嬢って凄いことなのよ?」
貴族の身分は位が高くなるごとに希少性が高まって行く。侯爵家もこの国では数少ない。だからそんな家門に生まれてきたことは、とても幸運なことなのだ。
それにわたしは、アンドレイ様の婚約者。これも侯爵令嬢だからこそ為せるわざなのだ。
だから、侯爵令嬢という身分も一種の才能だと思っている。……幼い頃から、そう自分に言い聞かせていた。
今回もこの高い身分を最大限に活用して、アンドレイ様の期待を越える結果を出せるように頑張らなきゃ。
「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」
「そうね」
馬車はわたしとヴェルを静かに運んで行く。
彼と一緒ならどんな困難も乗り越えられる気がした。