婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
27 本当の目的
冷たい地下室がしんと静まり返る。
わたしの瞳からこぼれる雫がポツリと微かな音を立てた。
「……悪い、彼女と二人きりで話させて貰えないか」と、レイが静かに言うと公爵令息と伯爵は目配せをして無言で部屋を出て行った。
扉が閉まるとレイはわたしの隣に来て、
「座ろうか」
優しく肩を掴んでゆっくりソファーに連れて行く。
その間も涙は止まらなくて、わたしの奥底にしまってあった感情も一緒に溢れ出てきた。
「はい、どうぞ」と、レイがポケットからハンカチを出して渡してくれる。
「ありがとう……」
わたしはそっと受け取って、目尻を押さえた。
「なにか温かい読み物を用意するよ」と、レイは再び立ち上がる。
「王太子殿下にそんなことさせられないわ」
「いいから、いいから。今はただのレイだから気にするな」
しばらくコポコポとお湯の沸く音と僅かな食器の音だけが聞こえていた。静かな空間の中で、わたしの心も少しずつ静寂に引き寄せられていく。
「どうぞ、侯爵令嬢」
「ありがとうございます、王太子殿下」
わたしはカップの口を付ける。レイの淹れてくれた温かいミルクティーはほんのり甘くて、まろやかな味が強張った身体を溶かしていった。
わたしの瞳からこぼれる雫がポツリと微かな音を立てた。
「……悪い、彼女と二人きりで話させて貰えないか」と、レイが静かに言うと公爵令息と伯爵は目配せをして無言で部屋を出て行った。
扉が閉まるとレイはわたしの隣に来て、
「座ろうか」
優しく肩を掴んでゆっくりソファーに連れて行く。
その間も涙は止まらなくて、わたしの奥底にしまってあった感情も一緒に溢れ出てきた。
「はい、どうぞ」と、レイがポケットからハンカチを出して渡してくれる。
「ありがとう……」
わたしはそっと受け取って、目尻を押さえた。
「なにか温かい読み物を用意するよ」と、レイは再び立ち上がる。
「王太子殿下にそんなことさせられないわ」
「いいから、いいから。今はただのレイだから気にするな」
しばらくコポコポとお湯の沸く音と僅かな食器の音だけが聞こえていた。静かな空間の中で、わたしの心も少しずつ静寂に引き寄せられていく。
「どうぞ、侯爵令嬢」
「ありがとうございます、王太子殿下」
わたしはカップの口を付ける。レイの淹れてくれた温かいミルクティーはほんのり甘くて、まろやかな味が強張った身体を溶かしていった。