婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ごちそうさま、とても美味しかったわ」
「それは、どうも」
「お茶を淹れるのも上手なのね。仮にも王子様がこんなことも出来るなんて意外だわ」
「あぁ、母上から教わったんだ。将来、伴侶のためにお茶くらい淹れられるようにしておけってね」
「まぁっ、それは未来の王太子妃に悪いことをしたわね」
「予行練習ってやつさ。――それで、落ち着いた?」
わたしは深く頷いた。こうやって温かい飲み物を飲んで彼と話していると、心が安定した気がする。
「えぇ、お陰さまで。そう言えば、競売会場で気が動転していたときも、今みたいにあなたに助けてもらったわ。あのときも、今日も、本当にありがとう」
「なに、困っている親友に手を差し伸べることは当然のことさ」
「あら、まだ親友でいさせてくれるのかしら?」
「鉱山や軍隊で寝食を共にした仲だからな」
「そう言えばそうだったわね」