婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「それが、この国で諜報活動をすること?」
「その……」
わたしは遠慮がちにレイを見た。
彼はふっと微笑んで、
「話して?」
「その……怒らないでよ?」わたしは一拍置いてから「レイモンド王太子殿下を籠絡してこい、って……」
「籠絡ぅっ!?」と、レイは目を剥いた。
「そうよ、籠絡。そして王太子殿下が企てている戦争の計画を暴いて来い、って」
「はぁっ!? 戦争だって!? 僕が? アングラレスと!?」
レイは心底驚いた様子で、大声で叫んだ。そして天井を仰いで、なにかを考えているようだ。
わたしは違和感を覚えた。今の彼の態度は、戦争計画なんて端から微塵も考えていないみたいだ。ただ驚愕している表情だけが張り付いていた。