婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「その……これから僕の言うことは君を傷付けることになると思うが、いいか?」と、彼は真剣な表情でわたしを見つめる。
「もう、ここまで来たら覚悟の上よ。どんな事実でも受け入れるわ」と、わたしも彼の紅い瞳を見返した。
「そうか。では、単刀直入に言うが、アンドレイ王子は君と婚約破棄をするつもりでこっちに送ったようだな」
「えっ…………」
覚悟はしていたものの、レイの言葉にわたしの気持ちはぐらりと揺さぶられた。すかさず深く呼吸をして正気を保つ。
お、落ち着くのよ……大丈夫よ……わたしなら大丈夫…………。
「……なぜ、そう思ったの? 遠くの地へ送って、どうやって婚約破棄するつもり?」と、わたしは平静を装って彼に訊いた。
「まずは婚約者に対しての扱いがあり得ない。未婚の令嬢を平然と異国の地へ送るなんて言語道断だ。だから元より君とは婚約破棄するつもりなのだと推測される。そして、王太子を籠絡しろと命令したのは、成功すれば不貞を訴えて婚約破棄をできるからだ。そして、仮に失敗したときのための戦争計画の調査なのだろう」