婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

「どういうこと……?」

 またもや心に棘が刺さっていく感覚に陥る。
 聞きたくない気持ちが耳を閉ざそうとする。

 ……でも、最後まで聞かないと。

「君がローラントの戦争について調査するということは、君……あるいはジャニーヌ侯爵家が戦争をしたがっている――という事実を作り上げるためだ。そこを突いて……例えば、侯爵家は戦が起きた際に莫大な利益が得られるので、紛争勃発のために工作をした、とでっち上げて糾弾する。そうしたら婚約破棄は確実だ。最悪は君の家門も取り潰されて処刑も免れないかもな」

「そんな……」

 わたしは絶句した。信じたいような、信じたくないような、不安定な気持ちだった。
 アンドレイ様がそんなことを考えていたなんて……。あんなに素晴らしい方が…………、


 ――本当に彼は素晴らしい方なの?


 ずっと心に引っかかっていた考えが、みるみるわたしを呑み込んでいった。

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