婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 レイはわたしに選択肢を与えてくれた。
 このまま見ない振りをして現状維持か、或いは未来を変えるのか……。

 わたしの心はまだ宙を彷徨っていた。

 仮にこのままアンドレイ様と結婚してどうするの? 彼の犯罪行為に目を瞑るつもり? 王になる人物の不正を許すの? そんな汚い人間とともに国家を運営できるの?

 仮に彼を嵌めて婚約破棄をして、そのあとは? わたしにの足元には王妃になる道しか敷かれていない。そういう風に育てられたから、それ以外の道が分からない。築かれた道が瓦解したら? それからはどうやって生きていくの?


 わたしはこれまで、自分で物事を決めたことなんて一度もなかった。いつも、両親やアンドレイ様が用意したものをただなぞっているだけ。そこに感情なんて乗っていない。

 だから、自身で進むべき道を選択して一人で歩いて行くという行為に……とてつもない恐怖を感じたのだ。

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