婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜




「オディール オディール」

 そよ風とともに窓からヴェルが舞い降りて来る。沈んだ心に鮮やかなエメラルドグリーンが生気を運んでくれたようだった。彼のつぶらな瞳を見ると、つい顔が綻ぶ。

「また親切な方に遊んでいただいたの?」

 わたしはヴェルに付いている葉っぱを外しながら丁寧に体を撫でた。彼は気持ち良さそうに喉を鳴らす。

 そのとき――、

「あら?」

 ふと、ヴェルの足首に結んである紙切れに気が付いた。薄くて真っ白い便箋が括り付けてある。
 これは、もしかして親切な方からのお便り?

 わたしは彼の足を傷付けないように、そっと便箋を取り除いた。
 ドキドキしながら手紙を広げる。

 そこには――……、


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