婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
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貴賓室にはわたしとレイ、そしてルーセル公爵令息が壁際で待機していた。わたしはベッドで上半身を起こした状態で、レイは目の前に置かれた椅子に腰掛けている。
しばらくの間わたしたちは静寂に身を包み、なんと話を切り出そうかと二人して目を泳がせていた。
「オディール……」
ややあって、レイがわたしの名前を静かに呼ぶ。目の前に現れた彼は顔面蒼白で、事件からちょっとしか時間が経っていないのに酷くやつれて見えた。
「レイ、大丈夫なの? お顔の色が……」と、わたしは慌てて口ごもっている彼に問い掛けた。
「……あぁ、僕は問題ない。君のほうこそ怪我は?」
「わたしは特に身体に問題ないそうよ。少し打撲と切り傷があるから、しばらくは安静にしておくようにとは言われたけど、身体に痕は残らないみたいだし……その、元気よ」と、わたしは笑ってみせる。気落ちしている彼を少しでも力付けたかった。
「そうか……。今回のことは本当に済まなかった……申し訳ないっ……!」
「気にしないで。むしろ謝るのはこちらのほうだわ。わたしが独断で行動したのも悪かったから」