婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「あとは? なにをしたい?」
「あとは……身分に関係ない友人をたくさん作って、使用人のいない手作りのパーティーを開いて朝まで馬鹿騒ぎをしたいわ。料理も飲み物もわたしが用意するのよ。わたしは心から笑い合えるような友をいっぱい作りたい」
「貴族としては? どうなりたい?」
「視野を広げて多角的に物事を見られるような賢明な貴族でありたいわ。もちろん義務は果たすし威厳や品格は落とさないようにするけど、領民と対話ができる貴族になりたい。わたしの考えを一方的に押し付けるんじゃなくて、互いに意見を交換して一緒に国を作り上げるの」
「他にやり残したことは? 君はなにを希望する?」
「そうね……。わたしは、心から尊敬できる、愛する人と一緒になりたい。たとえ政略結婚になっても、互いに信頼して支え合うような最高のパートナーになりたいわ」
「そうか……」
レイはふっと軽く息を吐いた。
彼の紅い瞳が星空のように、きらめいた。
「分かった。君のやりたいこと、全部やろう」
そして、彼はわたしの双眸をじっと見つめながら、おもむろに右手を突き出す。
「……僕と一緒に」
わたしは迷わず彼の手を握る。
強く、
ぎゅっと、強く。