婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 アンドレイが15歳のときにシモーヌと運命的な出会いを果たした。
 彼がお忍びでカフェへ遊びに行ったときに、たまたま彼女が隣の席に座っていたのである。

 その日、カフェでは超現実主義の芸術についての議論が起こっていた。平民の振りをしていた芸術好きな彼も勿論そこに参加していて、カフェは喧々諤々と白熱していた。
 男たちが熱く語っているところに、ずっと黙りこくってお茶を飲んでいたシモーヌがすまし顔でポツリと一言発する。

「つまり、『私は何者か?』ということに全てが帰結するのよね」
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