婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 シモーヌは自分の意思をしっかりと持っている人間で、アンドレイに対して物怖じせずに意見をズケズケ言うし、貴族令嬢なのに悪い遊びも知っている。
 また、オディールのように後ろに控えるのではなく、彼の隣に並んで立つような骨のある女性だった。

 ついに彼が自分は王子だと告白しても「あら、そう。ところで、今度の展覧会だけど……」と、気にも留めない様子で、幼少の頃から高貴な身分に持て囃されていた彼を驚愕させた。

 ほどなくして、二人は愛し合うようになった。

 アンドレイはもともと個人的に美術品に関する黒い事業を行っていたが、シモーヌと出会ったことによって拍車がかかる。
 ナージャ子爵家は禁止薬物の密輸や娼婦の売買、悪魔崇拝の祭儀の運営など、彼を凌駕する黒い商売を行っていた。そこに王子も加わって、抜け出せない底なし沼のような混沌とした絡み合いが出来上がっていったのだ。

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