婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ジャニーヌ侯爵令嬢は表向きは王妃教育の一環として外交を学ぶためにこちらに来られたということになっていますが、実のところは諜報を学ぶためだと王子殿下から伺っております」と、スカイヨン伯爵は確認するように言った。
「えぇ、その通りよ。殿下からは王妃になったら諜報部門の管理を任せたいと言われているの」と、わたしは笑顔で頷いた。
これは真っ赤な嘘だ。
アンドレイ様からは今回の特命は絶対に他言無用だと強く言われている。どこに間諜が潜んでいるか分からないからだ。それは大使さえも疑ってかからなければならないほどの、重大な任務なのだ。
それでも、王太子を籠絡するために自由に動けるように、わたしに「諜報を学ぶ」という大義名分を与えてくださった。これでわたしは、表向きは他国の貴族や役人との外交に励みながら、裏では諜報活動に勤しむことができるのだ。
さすがアンドレイ様だわ。よく考えていらっしゃるわ。