婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ねぇ、ダイヤモンドはどうするの? いつ攻めに行くつもり? あたし、早くダイヤのお風呂に入りたいわ」と、シモーヌはアンドレイに抱き着いた。
彼は恋人の頭を優しく撫でながら、
「まぁ、待て。あの女が王太子の籠絡に成功した以上、まずはローラント王国に慰謝料として鉱山を請求しようと思うのだ」
「あら、いいじゃない! 戦わずして勝つ、ね」
「あぁ。そして拒否をされたら直ちに攻め込む。向こうの戦備が出来ていない内にな」
「わお! 用意周到!」
「我が国の建国記念の式典に王太子が来賓するそうだ。ショーの開演はそのときだな」
「面白そうね。観客として楽しみにしているわ」
「君は出演者だろう? しかも主演女優だ」
「あら? あたし、お芝居はあまり得意じゃないわ」
「大丈夫だ。台本は俺が描く。君は俺の側にいてくれればいい。あの女が無様に婚約破棄をされる瞬間を、俺の隣で嘲笑ってやってくれ」
二人はキスをする。深く、深く……。