婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
……わたしは、国の中枢から「王子の婚約者に相応しくない」なんて言われていなかった。完全に、アンドレイ様の捏造だそうだ。
レイからそれを聞いたときは、ほっとしたと言うか、なんだか肩の力が抜けたような安堵感で不思議な感覚だった。
アンドレイ様の婚約者としてこれからも居続けることが出来るから嬉しいのではない。
わたしが、これまで王子の婚約者であれと努力してきたことが、周囲に認められていたことが誇らしかったのだ。
自分がやってきたことは間違いではなかった。少なくとも、王子の婚約者に相応しいと思われている事実に胸が一杯になった。
同時に、アンドレイ様に対して完全に心が離れてしまった。それはもうあっさりと。
悲しみなんてこれっぽっちもなくて、逆に気持ちが楽になって清々しい気持ちだわ。
彼はわたしを必要としていないし、わたしも彼を必要としていない。
それに気付いただけで充分だ。