婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

36 久し振りのジャニーヌ家

「……こんなに暗いお屋敷だったかしらね」と、わたしは思わず苦笑いをした。


 わたしとヴェルを乗せた馬車はついにアングラレス王国に到着して、今はジャニーヌ侯爵家の玄関ホールに足を踏み入れたところだ。

「おかえりなさいませ、オディールお嬢様」と、使用人たちがずらりと並んで出迎えてくれる。

「ありがとう。ただいま帰ったわ」

 ホールは大きなシャンデリアに照らされて赤いカーペットが広がり、壁は白地に金色の装飾でキラキラと光が反射して豪壮な雰囲気だったけど、なんだか陰鬱な印象を受けた。
 こんな気分のなるのは、自分の気持ちの変化を表しているからかしら? 古めかしい屋敷自体が過去のわたしを投影しているようで、物悲しい空気を感じるわ。
< 229 / 303 >

この作品をシェア

pagetop