婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「オディール、ただいま戻りました」と、わたしは両親にカーテシーをした。

 両親は一瞬だけ目を見張ってから、

「向こうではジャニーヌ侯爵令嬢として恥ずかしくない行動を取っていたのだろうな」

「あなたはアンドレイ殿下の婚約者なのですよ。きちんと自覚を持った振る舞いを心掛けていたのでしょうね?」

 ……やっぱり。この人たちは、いつもこれしか言わないのね。予想通り過ぎて笑っちゃうわ。

「お父様、お母様、問題ありませんわ。あちらではジャニーヌ家の名誉を傷付けるような行為は一切行っておりませんので」

「そのドレスはなんです?」と、お母様は眉をひそめる。

「ローラント王国の方たちが、わたしに似合うドレスを選んでくださったのです。素敵でしょう?」

 このドレスはガブリエラさんとアンナと一緒にブティックに行ったときに二人に絶対似合うと太鼓判を押された品だ。わたし自身も落ち着いた雰囲気と、なによりヴェルとお揃いなところが気に入っている。
< 232 / 303 >

この作品をシェア

pagetop