婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 わたしは両親の次の言葉も聞かずに強引に辞去した。
 パタリと扉を閉めて、ほっと軽く息を吐き胸に手を当てる。心臓がバクバクと大きく波打っていた。気持ちが高揚して全身が熱を帯びる。
 
 ……初めて、両親に意見を言って反抗したわ。

 もう彼らの操り人形にはならないって決意していたけれど、実際に行動を起こすとなるとまだちょっと緊張する。
 でも、これで小さな一歩は踏み出せた。ほんの僅かなことかもしれないけど、それは勇気となってわたしの中へ入って行った。


 明日はいよいよアンドレイ様と対峙する。そのことを考えると、自然と身体が引き締まった。
 わたしにとって、初めての抵抗。そして、決別の前の最後の抵抗。
 もう、絶対に負けないわ。
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