婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「アンドレイ様のお顔を拝見できて、長旅の疲れも吹き飛びましたわ」
「計画は順調なようだな」
わたしは黙ってゆっくりと首を縦に振る。
「王太子はちゃんと籠絡できたのだろうな」
「わたしはアンドレイ様の婚約者です。そんな恐ろしいこと、この口からは申し上げられませんわ」
思わせ振りに微笑みながら曖昧模糊に答えた。後々こちらが不利にならないように、明言は避けるように気を付けなければいけない。
しかし、彼はこれを肯定だと捉えたようで、ニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「よくやった。鉱山と軍隊に関する情報も大いに役立った」
「ですが、アンドレイ様の一番の目的はまだ……」と、わたしは困り顔をしてみせる。
「この調子だとそれも時間の問題だな。引き続き任務に励むように」
「承知しましたわ。これからも一生懸命隣国との外交を努めて参ります」