婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 アンドレイ様は満足そうに頷いて、

「王太子は式典の前日に来るんだったな?」

「えぇ、その予定です。王宮のゴルコンダの間を用意してくださって、ありがとうございます。あんな最高級のお部屋を手配してくださるなんて、恐れ入りますわ」

「当然だ。将来のローラント王国の君主だ、国賓待遇の最上級のもてなしをしなければな」

「実はその件で、改めてアンドレイ様にお願いがあるのですが」

「なんだ? 俺に出来ることなら手伝おう。言ってみろ」

 わたしは一拍置いてアンドレイ様の顔をそっと見やる。今日彼に会いに来た最大の目的は、形式上の挨拶ではなくこのお願いだった。
 ここからが正念場だと思うと、背中にピリリと緊張が走った。
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