婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 ……いよいよ、今日わたしは人生の進むべき道を切り替える。

 昨晩はこれまでの歩みやこれからの生き方についてずっと脳裏から離れなくて、ほとんど眠れなかった。朝起きたら隈が出来て青白い顔をしたわたしを侍女たちが一生懸命手入れしてくれて、ちょっと申し訳なかったわ。

 両親には感謝はしている。彼らに厳しく育てられなければ、今の自分はなかったはずだ。貴族として最低限の教養やマナーが身に付いたのは両親の教育の賜物なのだ。

 唯一の取り柄だと言われていた侯爵令嬢という身分も……その身位のお陰でレイと出会えたのだから、悪いことではなかったのかもしれない。
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