婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜



 そんな風に和やかに会話をしながら歩いていたら、あっという間に会場に到着だ。既に貴族たちは定位置に座っていて、二人の王子の到着を待ち侘びていた。

 レイが会場に現れると令嬢たちから黄色い声が上がる。彼女たちは皆、隣国の王太子の麗しい姿に色めき立っていた。
 まだ婚約者のいない王子……しかも適齢期なんて、令嬢なら誰しもが飛び付くだろう。自国の王子にはもう婚約者がいることだしね。――って、言ってくれれば喜んで差し上げますが。

 王族席の近くにはアンドレイ様の側近たちが控えていた。
 その中にはシモーヌ・ナージャ子爵令嬢の顔もあった。

 彼女は王子の瞳の色のパステルカラーのドレスを着用していた。
 フリフリのリボンと薔薇に見立てた飾りがわちゃわちゃ付いた可愛らしいデザインだ。デコルテ部分が大きく開いていて、明らかにそれはイブニングドレスじゃないの……と思わず指摘したくなるような大胆なドレスだった。

 一方わたしは、首までレースに覆われた地味なアフタヌーンドレスだ。裏地の下はドロワーズだけのストンとしたIラインの飾り気のないドレス。そして、色は王子の瞳の色で今日の晴れ渡った空のようなライトブルー。

 そう……わたしたちは色が被っていたのだ。
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