婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
貴族たちの間で静かな動揺が起こったのを感じた。
これだけ人数が多いと、ドレスの色が重なってしまうのはよくあることだ。しかし、王子の婚約者と王子の側近のドレスの色が同じとなると事情は違って来る。
しかも、ただの同色ではなく、王子の瞳の色。
これは明らかに意図して選ばれた色だ。即ち、子爵令嬢は堂々と侯爵令嬢に宣戦布告をした……と捉えられてもおかしくない。
子爵令嬢と視線がぶつかった。彼女は馬鹿にするように歪んだ笑みを零す。
彼女はもう隠さなくなったのね。おそらく今日わたしの断罪が行われる予定だから既に勝った気分でいるのでしょう。
わたしは敢えて反応せずに素知らぬ顔で正面を向いた。
彼らはついに化けの皮を自ら剥がしにきたようだ。でも勇み足だわ。今の行為で自分たちが不利になるのが分からないのかしら。こういうことは全てが終わってから行うべきだわ。
アンドレイ様といい子爵令嬢といい、なんでこんなに浅はかなのかしら……と、ただただ呆れ返った。