婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 わたしとアンドレイ様は王族用の扉から会場へと入場する。すると、瞬く間に貴族たちの注目の的になった。手前から波のようにざわめきが起こる。

 囁き声に耳を立ててみると、その内容は主にわたしのドレスだった。
 彼らは昼に侯爵令嬢が王子の側近の子爵令嬢と色被りをしたことが非常に気になっているようで、様々な憶測が飛び交っているようだ。

 わたしは「なにも知りませんわ」というような澄まし顔で王族用の定位置に着く。数段高いこの場所は会場の様子がよく見えた。

 両親と目が合う。二人とも娘のドレス姿に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 お母様には今日のドレスを事前に見せていた。でも、それはフェイクだ。
 アフタヌーンドレスは実際に式典で着用したものを見せたが、イブニングドレスは王子の金髪をイメージした黄色のパステルカラーのフリフリした可愛らしいドレスを提示していた。
 それが蓋を開けてみれば胸元が大胆に開いたセクシーなマーメイドドレスだ。両親の驚きは相当のものかもしれないわね。
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