婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 不意に視線を感じたので、目を向ける。
 ……案の定、ナージャ子爵令嬢だ。驚愕した様子でまるで珍獣でも眺めるみたいにわたしをジロジロと見つめていた。
 彼女は昼間と同じアンドレイ様の瞳の色のドレスのままで、式典のときより豪華なパリュールを装着していた。それは子爵家の財力では用意できないような最高級品だと一目で分かる宝石だった。
 きっとアンドレイ様が今日のためにプレゼントしたのね。もしかしてあれらも盗品かしら……なんて、他人事のようにぼんやりと考える。

 会場にはガブリエラさんとリヨネー伯爵令息の姿もあった。目が合うなり、グッと親指を立ててくれた。わたしも目線で合図をしながら深く頷く。
 二人の顔を見てなんだか安心したわ。味方がいるってなんて心強いのかしら。
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