婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜



「国王陛下、王妃殿下、及びローラント王国王太子殿下、御成です」

 しばらくして、陛下方の御出だ。ゲストの王太子殿下を伴ってのご臨場である。
 またもや令嬢たちから黄色い声が上がる。昼の式典では王太子殿下と会話をする機会が設けられなかったので、今夜こそはと彼女たちは必死の形相だった。

 わたしは今回も王族の席で貴族たちの挨拶を受けた。若い令嬢は王太子殿下へのアピールに一生懸命で、夫人たちはこれまでのドレス姿とは様変わりした侯爵令嬢に好奇の視線を向けていた。

 時折り、近くに控えている王子の側近の子爵令嬢と見比べられる。どちらに付くか決めかねているのかしら。
 一見すると、王子の寵愛を受けているように思われる子爵令嬢のほうが有利かもしれないわね。
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