婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
わたしとレイは顔を見合わせて、
「素晴らしい想像力だな」
「えぇ、本当に。アンドレイ様は芸術家気質ですからね。頭の中はきっと多くの空想で満ち溢れているのでしょう」と、揃って冷笑した。
「そう余裕ぶっていられるのも今のうちだ。――あれを持って来い!」
アンドレイ様が合図をすると彼の側近たちが動き出し、いくつかの書簡を持ってきた。いつの間にかナージャ子爵令嬢が我が物顔で彼の隣に立って、ニタニタと薄笑いを浮かべていた。
アンドレイ様は声を張り上げ、朗々と演説の真似事を始める。
「ここに書かれているのはローラント王国の軍事に関する機密情報だ。ジャニーヌ侯爵令嬢が籠絡した王太子殿下から直々に取得したものである! 筆跡鑑定の結果、彼女の字だとも証明もされている。この女は家門が行っている事業を潤すために、王太子を誘惑して情報を引き出し、更には両国間に戦を起こそうと画策していたのだ!」